婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 不思議に思って視線を巡らせると、奥の壁に薬草が干してあるのが見えた。
 あれの匂いかもしれない。
 どうやら魔法ギルドは、薬も扱っているようだ。薬師らしき女性が、カウンターで大量の薬を納品していた。
(あれって何だろう。ポーションとか? 薬師じゃなくて、錬金術師だったりして)
 興味を持って見つめていると、視線を感じたのか、薬師らしき人が振り向いた。茶色の髪をした少し年上の女性だった。
 彼女はクロエを見ると、不愉快そうに顔を背ける。
 よく見れば彼女だけではなく受付の女性も、依頼を見ていた魔法ギルドに所属している人達も、こちらを見下すような視線を向けていた。
(なるほど、これが移民の女性に対する態度なのね)
 クロエのような黒髪は、このアダナーニ王国には存在していない。
 国民のほとんどは、茶色や赤色の髪をしている。貴族には金髪が多く、稀にエーリヒのような銀髪がいるくらいだ。
 だから見ただけで移民だとわかるクロエに、女性達は厳しい視線を向けているのだろう。移民は差別されているからと、エーリヒが心配してくれた通りのようだ。
 ここはあまり良い国ではない。
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