婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 エーリヒのその言葉で、周囲がざわめいた。
 クロエに向けられた嫌悪の視線はすべてなくなり、むしろ羨むような視線を感じる。魔石を作れるというのは、クロエが思っていたよりもすごいことらしい。
「は、はい。手続きの準備をしますので、少々お待ちください」
 ギルド職員が奥に駆け込んでいく。
 クロエはエーリヒに抱かれたまま、彼を見上げた。
「魔力登録って、何?」
「クロエの魔力を登録しておくと、魔石を作ったのが間違いなくクロエだと証明できる」
 誰かがクロエの作った魔石を自分が作ったものだと偽って売ろうとしても、それをしておけばすぐに嘘だとわかるようだ。
(つまり転売防止、ってことよね?)
 女性で、しかも移民であるクロエを軽く見て、手柄を横取りする者が現れる。エーリヒはそう考えて、しっかりと対策してくれたのだろう。
「わかったわ。ありがとう」
 自分のために色々と考えてくれたので素直にお礼を言う。
 するとエーリヒは、クロエにそう言われたのが嬉しくてたまらないとでも言うように、瞳を細めて笑う。
 その優しい笑顔に胸がどきりとした。
(演技、だよね。そういう設定だから……)
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