婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 優しく髪を撫でられ、手を握られて。
 甘い声で名前を呼ばれてしまえば、怒り続けることができなくて、最後にはそう言ってしまった。
 間に入った魔法ギルドの職員は、あきらかにほっとした様子だった。
 誤解していたとはいえ、無抵抗の人間に魔法で攻撃したのだから、本来なら免職になっていてもおかしくはない。
 だが彼が貴重な魔力持ちの魔導師だということで、ギルド側も何とか穏便に収めたいと思っていたようだ。
 
「まぁ、ギルドに貸しを作れたな」
 ふたりの家に戻ったあと、エーリヒはそんなことを言って笑う。
「もう、本当に心配したんだから。急に魔法で攻撃するなんて」
 いくら虐げられていた過去があったとしても、魔法で攻撃して良い理由になんかならないはずだ。
 それも、あれほどの強さで。
「結構強い魔法だったわ」
 サージェという男は、かなり強い魔導師のようだ。
「そうだな。まだ少し、腕が痺れるくらいだ」
「えっ」
 クロエは慌てて、エーリヒの腕に両手を添えた。
「そういうことは早く言って! どうしよう、回復魔法って私にも使えるかな……」
 強く願えば、叶う。
 それが魔女であるクロエの力だ。
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