婚約破棄されたので、好きにすることにした。
「治りますように」
 もうあんな光景は見たくない。
 エーリヒが傷付かないように、精一杯祈りを込めて祈った。
「どうかな?」
「……すごいな。痛みも痺れも消えた」
 痛みまであったのかと、クロエは顔を顰める。
「私には治せる力があるんだから、今度から隠さないで」
 絶対にそうして欲しいと詰め寄れば、エーリヒは決まり悪そうに顔を背ける。
「エーリヒ?」
「クロエの前で他の男にやられたなんて、格好悪くて」
 それで隠していたようだ。
「でもクロエがあんなに心配してくれるとは思わなかった。すごく嬉しい」
 腰に手を回され抱き寄せられて、慌てて離れようとする。
「ちょ、ちょっと待って。ここは家だから。今は恋人の振りをしなくてもいいのに」
「何を今さら。毎日抱き合って眠っているのに」
「言い方! そんなこと言うなら、別々に寝るわ」
 恥ずかしくなって叫ぶようにそう言う。
「俺はあのベッドが気に入っているから、嫌ならクロエがソファで寝るしかない」
「私だって気に入っているわよ!」
 ふかふかのベッドを捨ててソファで寝る気はない。
「だったら一緒に寝るしかないね」
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