婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 だから自分にとって大切な思い出が、相手にとってはつらい過去の話だと気が付いて、寂しさを隠して謝罪する必要なんてまったくないのに。
「それで、これからどうする?」
 さりげなくクロエから離れて、エーリヒは今までの話などなかったように、明るく言う。
「これからって?」
「クロエは魔石が作れるから、それだけでギルドでの評価は上がっていく。納品は俺がするから、無理にギルドに行く必要もない」
 怖がっていると思って気遣ってくれる言葉を、否定することもできなくて、頷くしかなかった。
「うん。当分はそうするわ。お願いしてもいい?」
 以前のクロエなら、きっとそうする。
 そう思って、エーリヒに任せることにした。
「もちろんだ。そのためにクロエの魔力をギルドで登録をしたんだから」
「ありがとう。エーリヒはどうするの?」
「俺は依頼を受けて果たさないとランクを上げることはできないから、それなりに頑張るよ」
 王都は城壁に守られていて、規模はかなり大きい。
 王都から出なくても果たせる依頼は多いようだ。
 地下道には魔物も出るという。
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