婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 夕食の後片付けをしたあとは、それぞれ思い思いに過ごす。
 用があるから先に寝ているように言われて、クロエはおとなしく寝室に向かった。
 彼が来るまで待つつもりで魔法の本を広げていたはずが、いつのまにか眠ってしまったようだ。
 ふと寒さを感じて目を覚ますと、もう深夜のようだ。
「エーリヒ?」
 隣に眠っているはずの彼の姿がない。
(もしかして……)
 ショールを巻き付けて応接間に向かうと、予想した通り、エーリヒはソファで寝ていた。クロエが怖がる素振りを見せたので、気遣ってくれたのだろう。
「……ごめんなさい」
 眠っているエーリヒに、小さく呟く。
 あのときは罪悪感から振り払ってしまっただけで、彼のことを怖いと思ったことは一度もない。
 それは以前のクロエも同じである。
 それなのに少し拒絶してしまっただけで、こんなにも気遣ってくれている。
(あのベッド、気に入っているって言っていたのに)
 クロエは寝室に戻ると毛布だけを持ってきて、ソファの下に座った。
 そのまま床に転がって目を閉じる。
 自分だけベッドに眠るつもりはなかった。

 目が覚めると、身体が酷くだるかった。
「ん……」
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