婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 頭が痛くて、ぞくぞくするような寒気がある。
 何とか身体を起こそうとしたけれど、起き上がれそうになかった。
(私、どうしたんだっけ?)
 いつのまにかベッドに戻っている。ぼんやりと天井を見上げていると、エーリヒの声がした。
「クロエ、目が覚めたか?」
 ひやりと冷たい手が頬に触れる。
 それが心地良くて、目を閉じて擦り寄った。
「どうしてあんなところで寝ていた? クロエはあまり身体が丈夫ではないんだから、無理をしては駄目だ」
 そう言われて、寝室から毛布を持ってきて、エーリヒの傍で眠ったことを思い出す。あのまま寝てしまったので風邪を引いたらしい。
(ああ、そうだった。クロエは深窓の令嬢だった……)
 今までほとんど屋敷から出たこともなく、大人しく静かに暮らしていたのだ。前世を思い出して気持ちはすっかり一般市民だったが、身体はか弱い令嬢のままだったらしい。
 思い出してみれば、いつも寒いと思う前に暖炉には火が点されていた。魔法書や魔石作りに熱中していると、これ以上は駄目だと寝室に連行されたことが何度もある。
 大切に守られていたのだと、今さら気が付いた。
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