婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 思い切ってそう尋ねると、エーリヒは顔を上げてクロエを見つめる。
「クロエは俺の恩人だったから、手助けができればと思って色々と提案してきた。だが……」
 魔法がかけられた右腕に手を置いて、彼は言葉を続ける。
「これだけすごい力を持っているクロエなら、ひとりで逃げられたな」
「そんなことないよ!」
 思わず立ち上がり、クロエは即座に否定した。
「私だけだったら、自分の力がどういうものかも知らなかった。女ひとりで旅をするのも不安だったし、相棒がいたらいいのに、と思っていたの。でもこの国に誠実な男性なんて、探してもなかなかいないもの。エーリヒが来てくれて、すごく助かったわ」
 まず、宝石を換金するところで躓いていた。
 ドレスを着た訳あり令嬢なんて、騙されて自身が売り物にされてもおかしくはない。
 魔法が使えることはわかったが、それが魔女の力だなんて知らなかった。
 だからクロエが魔女で、その力を自覚していないことを誰かに知られてしまったら、どんな目に合っていたか。
 前世の記憶があっても、この世界の常識は知らない。
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