婚約破棄されたので、好きにすることにした。
(彼も移民だったというのに、そういうところを配慮してはくれないのね)
 今はエーリヒが傍にいるから問題はないが、もしクロエが本当に移民で単独行動をしていたら、危険な目に合ってしまってもおかしくはない。
「……必要ありません」
 色々な感情を押し殺してそう答える。
「遠慮する必要はないよ。昨日のお詫びだから」
「もう私に関わらないでいただければ、それでいいです」
 クロエの冷たい態度と言葉に、妬むような視線を向けていた人達さえ困惑している。
「本当に君達は恋人同士なのか? 信じがたいよ。彼がそう言わせているようにしか思えない」
 断られたサージェは、まだエーリヒを疑っているようだ。
 自分の申し出をクロエが断るはずがない。そんなことを言うのは、エーリヒにそう指示されているからだと思っている。
 力を封印していてよかったと思う。
 そうでなければ、彼の不幸を願っていたかもしれない。
「私はエーリヒに相応しくない。そう言いたいのですか?」
 なぜ昨日会ったばかりの人に、そこまで言われなくてはならないのだろう。
 クロエはむっとして、しがみついていたエーリヒの腕をますます強く抱きしめる。
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