婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 そしてギルドに居合わせた独身の男性からは、この場をギルドに相応しくない甘い雰囲気に変えてしまった原因として。
 クロエはエーリヒの手を掴んだまま、立ちすくむ彼を無視して依頼書を手に取った。そのまま受付に持っていく。
「すみません、この依頼を受けたいんですが」
「……わかった。少し待ってくれ」
 昨日と同じ男性に受付をしてもらい、注意事項を聞く。
 薬草は見極めが難しいらしく、違うものを持ってきてしまうと依頼達成にならないから気を付けて欲しいとのことだった。
「君なら、そんな依頼を受けなくても……」
 サージェがまだ何か言っていたが、完全に無視をする。
(そもそもギルド員なのに、依頼を差別するなんて)
 もう二度と関わり合いたくないと思いながら、そのままエーリヒと一緒にギルドを出た。

「本当に嫌な人ね。もう会いたくないわ」
 怒りのままに早足で歩くが、エーリヒは余裕さえ感じる足取りでついてきている。もともと身長差があるのだから仕方がないが、何だか意地になってしまって、必死に歩いていた。
「クロエ、あまり急ぐと危ない」
 ぐいっと腰を引き寄せられ、仕方なく足を止める。
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