婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 クロエは自らの中に封じた力を確認するように、目を閉じた。


第四章

 それからふたりで手を繋いだまま、明日のためにお弁当の買い出しに行くことにした。
 いつもは別々に買い物をしているので、こうしてふたりで行くのは初めてだ。
「すごい人ね」
 町中には人が溢れていて、クロエは思わずエーリヒの腕に掴まる。はぐれたら迷子になってしまいそうだ。
 咄嗟の行動だったのに、腕を組まれたエーリヒは嬉しそうに笑顔を見せる。
 それを見て、何だか恥ずかしくなってしまう。
「……はぐれてしまいそうだから」
 思わず言い訳を口にすると、エーリヒも頷く。
「そうだな。クロエが迷子になるといけないから」
 顔を見合わせると、つい笑顔になった。
 そして腕を組んだまま、市場を歩いた。
「行きたいところはあるか?」
 そう聞かれて、少し考える。
「そうね。いつもエーリヒが買ってくれるサンドイッチのお店に行ってみたいわ」
「わかった。じゃあ行こうか」
 いつも包み紙が同じなので、エーリヒが食事を買う店は決まっていると気が付いていた。どんな店なのか、ずっと気になっていたのだ。
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