婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 けれど、一時間ほど探し回っても、納品できる状態のものは少なかった。
 少し枯れていたり、大きさが充分ではなかったりする。
「この辺はあらかた採取されてしまったようだな。もう少し奥に行ってみよう」
「うん」
 奥に行くほど自然がそのまま残っていて、木々が生い茂り、鬱蒼としている。
 日中なのに薄暗いほどだ。
 周辺を見渡しながら歩いていたクロエは、何かに足を取られて、危うく転びそうになる。
「きゃっ」
「クロエ、危ない」
 後ろを歩いていたエーリヒが、すぐに支えてくれた。
「ごめんね、ありがとう」
「歩きにくい道だから、気を付けて」
 優しい笑顔でそう言われて、胸がどきりとする。
 そういう設定だからという言い訳をやめたエーリヒは、クロエに対する好意を隠さなくなった。
 これほど愛されて、幸せを感じないはずがない。
 ふたりでくまなく公園を回り、昼近くには規定の数の薬草採取を終えることができた。
 運よく群生している場所を見つけたので、まだ薬草はたくさんあった。
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