婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 それなのに役立たずの娘は、よりによって夜会という公式の場で婚約解消を言い渡され、その場から逃げ出したのだ。
 王女の降嫁を望む者は多い。
 さらに近隣諸国でも、魔女であり王女でもあるカサンドラに注目している。
 まだサリバとの婚約が正式に発表されていないうちに、キリフとの婚約解消の噂が広まってしまったのは痛恨だった。
 娘のクロエには、魔女の降嫁の鍵となるキリフを強く繋ぎ止めておけと強く言ったはずだ。
 だがクロエは、それを果たせずに行方を眩ませている。
 このまま見つからなかったら、本当に婚約が解消されてしまうかもしれない。
 クロエだけではなく、サリバと王女の婚約もである。
「早くクロエを探せ! 多少、手荒な真似をしても構わん。必ず連れ戻せ!」
 メルティガル侯爵家の騎士らにそう命じると、苛立ったまま、窓から外を睨んだ。
 ふと、窓ガラスに映った自分の姿に違和感を覚えて、じっくりと眺める。随分と年を取ったように見えたのは、すべてが思うようにいかないせいか。
 まさか、髪の毛が薄くなったからだとは思わなかった。
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