婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 カサンドラも綺麗なものが大好きだったから、エーリヒの幼いながらも卓越した美貌には心惹かれた。だが言葉にはせずとも自慢そうなクラーラの態度が気に入らず、ずっと興味のないふりをしていた。
 ふたりの前からエーリヒの姿が消えたのは、クラーラとカサンドラが十四歳になった頃だ。
 理由は、彼の異母姉であるクラーラの婚約が決まったせいだ。
 婚約者が決まったというのに、娘がいつまでも異母弟に執着していては、体裁が悪い。そう考えたアウラー公爵が、エーリヒを騎士団に入れたのだ。
 あんなに綺麗な少年を、騎士団に入れるなんてもったいない。
 そう思っていたが、カサンドラはちょうどこの頃、魔女としての才能に目覚め始めていた。
 このアダナーニ王国で、魔女が生まれたのは初めてのことだった。
 周囲は騒がしくなり、カサンドラ本人もすべてが自分の思い通りになる力に酔いしれていた。
 カサンドラの力は、魔女の故郷と言われているジーナシス王国で生まれた魔女と比べると、随分弱いものらしい。
 それでも、目の前の人間を思うように動かすことはできる。
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