婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 父はまだしも、兄とキリファにとってはあまりにも非情な報復だった。狼狽えるクロエの隣で、エーリヒはまだ笑い続けていた。
「あ、あのメルティガル侯爵と、キリフ殿下が、薄毛に……」
「どうしよう。さすがに過剰な報復じゃないかしら?」
「……いや。あのふたりがクロエにしたことを考えれば、軽いくらいだと思う。一生、薄毛に悩んでもらおう」
 そう言ったエーリヒは、こんなに笑ったのは初めてだ、と言う。
 笑うこともできないくらい、過酷な生活を強いられてきた彼の癒しになれたのなら、散ってしまった髪の毛も本望かもしれない。
「そうだ。私の魔力が人よりも多いなら、魔石を作れるかな?」
 魔石をたくさん作ってアイテムボックスに入れておけば、資金には困らないのではないか。そう思いついて提案する。
「そうだね。クロエならできるかもしれない。明日、水晶をいくつか買ってくるよ」
「うん、お願い」
 エーリヒが言うには、女性の魔導師は戦いに出るよりも、そうして魔石を作って売っている者が多いようだ。
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