婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 この国出身の魔導師は全員国に仕えているが、王都には他国出身の魔導師も存在していて、魔石を売ってかなり裕福な暮らしをしているようだ。
 わざわざ冒険者にならなくても、生活することができるかもしれない。
(冒険はしてみたいけど、魔女だとわかるといろいろ面倒そうだし。うーん、自分で作った魔石を持ち歩いて、魔術師として戦ってみるとか?)
 とにかく明日、魔石を作ってみてからだ。
(アイテムボックスの検証もしてみたいし……)
 試してみたいことはたくさんある。
 魔力の制御も勉強しなくてはならない。
 明日から忙しくなりそうだ。

 そして新居で迎えた朝。
 クロエは、窓から降り注ぐ朝陽に照らされて目が覚めた。
 今日も良い天気のようだ。
「うーん、よく寝たかも」
 そう呟きながら身体を起こすと、長い黒髪がさらりと揺れる。
 馴染みのある色に、つい自分が異世界に転生していたことを忘れそうになってしまう。
 今日は何曜日だろうか。仕事に行かなくては。
 そう思ってしまい、慌てて首を振る。
(私はクロエ。元侯爵家の令嬢。ただいま逃亡中……)
 自分に言い聞かせてから、立ち上がった。
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