婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 完全に日本食である味噌汁がエーリヒの口に合うか心配したが、問題はないようだ。
「クロエの手料理が食べられるなんて思わなかった。ありがとう」
 嬉しそうに言われてしまうと、簡単な料理だっただけに、少し照れくさい。
(まぁ、たしかに普通の侯爵令嬢は料理しないからね)
 クロエの記憶だけなら、絶対にできなかったことだ。
「料理には興味があったの。これからもいろいろ作ってみるからね」
「うん。楽しみにしている」
 自分のために料理をするのも好きだが、こうして一緒に食べてくれる人がいるのはしあわせなことかもしれない。
 朝食が終わったあと、今日の予定を話し合う。
「今日は町に、水晶を買いに行こうと思う。クロエはどうする?」
 魔石を作るための水晶だ。
「私も行ってみたい。一緒に行っても大丈夫?」
 まだゆっくりと町を歩いてみたことがない。水晶が売っている店も見てみたいし、食材などもいろいろ探してみたい。
 でも、迷惑をかけてしまうならおとなしくしているつもりだった。
 日常生活が楽しくて、つい忘れそうになってしまうが、今は逃亡中の身だ。
「ああ。その姿なら問題ない」
< 70 / 266 >

この作品をシェア

pagetop