婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 それに、もし魔石を作ることができれば、経費は充分に回収できる。
「手に取ってみたいし、買ってみる」
 そう決意したのに、なぜかエーリヒが買ってくれた。
「自分で買うわ」
 慌ててそう言ったが、彼は取り合ってくれない。
「最初の魔石は、俺に贈らせてほしい。意味のあることだから」
「意味って、どんな?」
 今はまだ内緒だ、とエーリヒは優しい笑みを浮かべる。
「時期が来たら、きっとわかる。今はただ、何も言わずに受け取ってほしい」
 そこまで言われてしまえば、それ以上追及することはできなかった。
「わかった。ありがとう」
 そう言って魔石を受け取る。
 ここは有り難く受け取って、彼には他の形で返せるようにしようと思う。
 冷たいはず水晶は、ほんの少しだけ温かく感じた。
(これが魔石かぁ……)
 買い物をして家に帰ると、クロエはさっそくエーリヒに買ってもらった魔石を取り出して、じっくりと眺めた。
 もともとはただの水晶のはずなのに、淡く光っている。
 きっとこれが魔力だ。
(同じようにできるかな?)
 クロエは買ってきた水晶に魔力を込めてみた。
 けれど、なかなか思うようにいかない。
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