婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 王女は我儘にふるまい、侍女たちを平気で傷付け、役立たずと罵っている。
 思っていたよりもずっとひどい。
 こんな人にエーリヒが囚われていたのかと思うと、怒りが募った。
(もう絶対に、あなたには渡さないから)

「あれ?」
 目が覚めた瞬間、クロエはエーリヒに抱きしめられていることに気が付いた。
 近頃は毎朝のように、こうして目覚めている。
 この状況よりも、もう驚かなくなっていることのほうが恐ろしい気がする。
(結構離れて寝たんだけどなぁ……)
 昨日の夜は、ベッドの隅に眠ったはずだ。
 こんなに広いベッドなのだから、よほど寝相が悪くない限り、こんなに密着しないのではないかと思う。
(もしかして、私ってよほど寝相が悪いとか?)
 そうだとしたらエーリヒも迷惑だろう。
 寝室は狭いが、何とかしてベッドをふたつ置いたほうがいいのかもしれない。
 そんなことを思いながらも、エーリヒを起こさないように気を付けて、彼の腕の中から抜け出そうとする。
「ん……」
 いつもならすんなりと抜け出せるはずだったが、今日のエーリヒは少し眠りが浅かったようだ。
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