婚約破棄されたので、好きにすることにした。
「そうかもしれないが、何か他の理由がありそうだ。だからこそ、クロエのことを必死に探している。だけど団長は、ただやみくもに探せと喚き散らすだけだ。クロエがどこに逃げたのか、クロエには頼れる友人がいたのかとか、そんなことをまったく知らないようだ」
「だから王都の出口ばかりを、騎士を使って厳重に見張っているのね」
 もっとも父が知らないのも当たり前で、クロエに頼れる友人などひとりもいなかった。
「そうだね。ただ今のクロエを見て、メルティガル侯爵家のご令嬢だと思う人はいないよ。たぶん、キリフ殿下や団長の目の前に立ってもわからないような気がする」
「え、そんなに?」
 クロエは首を傾げて、自分の姿を眺めてみる。
 変わったことといえば、髪を黒髪にしただけだ。
「それだけ私に興味がないってこと?」
「まず彼らはクロエに魔力があることを知らない」
「うん、たしかに」
 クロエだって今まで知らなかったくらいだ。
「そして、黒髪になったクロエは人目を惹くほど綺麗になった。俺としては、クロエは以前から綺麗だったと思うけれどね」
「あ、ありがとう……」
 面と向かって言われると、つい頬が熱くなってしまう。
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