前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ

7、王配

(驚いたわ。リーヴェスまで生まれ変わっているなんて……)

 リーヴェスは前世、ルティアの――女王アリーセの王配であった。

 今と同じ公爵家の生まれで、王家の血も引いていた。アリーセとは幼い段階ですでに結婚が決められていた仲だった。リーヴェスは非常に優秀な男で、人望もあった。穏やかで優しく、普通なら夫婦仲も上手くいきそうだが……女王アリーセとの仲はお世辞にもよいとは言えなかった。

(前世のわたしの性格はどこか傲慢で、ある意味上に立つ者だったのよね……)

 生まれた時から女王になるべく、ひたすら厳しく躾けられた。親の愛はなかった。物心ついた時には両親はおらず、死んだと聞かされていた。周りはみな大人ばかりで、唯一甘えることができたと思われる乳母も、そうそうに引き離された。

 だから両親のもとで普通に育てられたリーヴェスとの価値観が食い違い、冷えた夫婦仲になってしまったのもある意味当然だった、と今なら客観的に思える。

(だからリーヴェスはわたし以外の女性に愛を求めた……)

 その時のことを思い出そうとすると、ルティアは胸が苦しくなる。思い出したくない、と頭が痛む。

(もう、考えるのはやめましょう……)

 リーヴェスのあの様子ではきっと前世の記憶があるのだろう。ルティアに記憶があることを知ったら、きっといろいろ言いたいことがあるはずだ。

 だがルティアは自分に記憶があることを打ち明けるつもりはない。今後リーヴェスに関わることも一切ない。

 その方がお互いのためにいい。

(それに記憶がないとわかれば、彼も関わろうとはしないでしょう)

 だから大丈夫だと、ルティアは自分に言い聞かせるように胸の前で震える手を握りしめた。
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