身代わり婚約者との愛され結婚
「お前が成人するまで散々待ったろ?」
「それでもよ。貴方に仕事があるように、私にも仕事があるの。それにお父様たちにも相談しなくちゃいけないから」

 そこまで言ってやっと、渋々だが納得してくれたらしいベネディクトは、大きなため息を吐きながら立ち上がった。

“ため息を吐きたいのは私なんだけれど!”


「とりあえず俺の意向は伝えたから。なるべく早く段取りしてくれよ」

 それだけを言い残しあっさりと出ていく彼の背中をぼんやりと見る。
 
 名残惜しそうにしろとまでは言わないが、それでも出ていく時に振り返るくらいはしなさいよ、と思った私は指先でそっと唇に触れた。


「……ベネディクトからは、さよならのキスなんていらないわね」

 レヴィンにさよならのキスをねだった時の事を思い出す。

 終わってしまう彼との時間が名残惜しくて、気付けば伸ばしてしまっていた手。
 そんな私の手に、そっと口付けを落としてくれたレヴィン。

 こんな気持ちを抱えて私はベネディクトと婚姻なんて結べるのかと思い、けれど貴族として生まれた私には果たさねばならない義務がある。
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