身代わり婚約者との愛され結婚
“帰っちゃう!”

 ハッとした私が慌ててレヴィンの服の裾を掴む。

「待って! そ、その……」

“でも、なんて言えば”

 きっと疲れていない、なんて嘘を吐いてもすぐに見抜いてレヴィンは帰ってしまうだろう。
 けれど、引き留める言葉も思い付かない。

 何も言葉が出てこない代わりに、裾を掴む手だけにどんどん力が入り指先がほんのり白くなった。

 そんな指を、そっとレヴィンが手のひらで優しく包み裾から指を外す。


「今日は座るか聞いてくださらないのですか?」

 帰ろうとしていたはずなのに、くるりと側まで戻ってきてくれたレヴィンがそっと小首を傾げる。
 その様子がなんだかわざとらしすぎて逆に可愛い。

「今日も、お茶をいかがかしら」
「はい、ティナがいいと言ってくれるなら」

 慣れた足取りで温室の中にあるテーブルまで進み、私の為に椅子を引いてくれる。

 いつもより目が合うのは、きっと彼がずっと私の体調を気遣い顔色を確認してくれているからだろうで……


“過保護なんだから”

 胸の奥がきゅんと熱くなる。
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