身代わり婚約者との愛され結婚
 開けられたその小箱には、可愛らしい花をモチーフにした指輪が入っていた。


「クラウリー家の生花の事業は潰えました。その責任を取って、スペアの地位を甥に譲ることになりました」

“そういえば、嫡男であるレヴィンのお兄様に息子が生まれたって話があったわね”

 情報収集で行ったマリエッテ様のお茶会で、そのような話があったと思い出す。
 
 けれど、まだ生まれたばかりの子に後継者教育が出来るはずもなく、そして嫡男の息子ならばその子こそが未来の後継者だろう。

“背中を押してくれたのね”

 大事なスペアを家から出すための建前。
 そんなあからさまな建前を用意してくれたクラウリー家に、そして今目の前にいてくれるレヴィンが堪らなく嬉しくて。

 じわりと揺れる視界。


「俺と、結婚してくれますか?」
 
 
 けれどちゃんとこの目で見たいから、指先で涙を拭いにこりと微笑んだ。

 
「レヴィンと、観たいオペラがあるの」
「オペラですか?」
「えぇ、悲恋なのだけれど……それでも、相手を想う気持ちが強調された物語だったわ」

 悲恋、と聞いてレヴィンが戸惑い瞳が揺れる。
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