身代わり婚約者との愛され結婚
「この間のところに、また、行く?」
「この間のところって……、ッ!」

 まるで誘惑するようにくすりと微笑みながらそう言うと、一瞬わからなかったのかぽかんとしながら私の言葉を繰り返したレヴィン。

 そしてすぐにこの間のところが、先日ベネディクトに反発して入った宿屋のことだと気付いたらしく――

「い、行きません!」
「あら? この間は一緒に入ってくれたじゃない」
「今日は、ダメ、です」
「どうして今日はダメなのかしら」

 プイッと顔を逸らしながら言うレヴィンの耳が真っ赤に染まっているのを見てうきうきと心が踊る。

“今どんな顔をしているのかしら”


 堪らなく気になった私は、彼が顔を逸らした先に回り込んで無理やりぱっと彼の表情を確認し――……

「今日は自制が効く気がしません。無理やりにでも俺のものにしてしまいたくなりますから」

 だから、ダメです! と、照れ隠しで少し睨むようなレヴィンと目があった。


「っ!」

 少し情欲に揺れたような瞳があの日を思い出され、私の下腹部もきゅんと熱を孕む。

“確かに、私も今日はダメかも”

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