身代わり婚約者との愛され結婚
 もし彼が身代わりではなく本物の婚約者ならば話は違ったのだろうが、それでも。


「じゃあ、次の機会にするわっ」
「ちょ、ティナ!?」
「ふふ、散々私を笑った罰よ! どこまで本気か考えておいてね」

 心に落とした影を見て見ぬふりをした私は、精一杯悪戯っぽく彼に笑顔を向けたのだった。




 顔の火照りを冷ますためにのんびり歩きながら帰ってきた私たち。

 本当は今日の帰りも口付けされるかとドキドキしていたのだが、レヴィンはエスコート以上は私へ触れず帰ってしまった。

 
“でも、私があげたポピーを凄く大切そうに抱えていたわ”

 その事実に少し残念に思いつつ、それと同時にそんな様子の彼へ愛おしさが芽生えそうになる。

 ハッとした私は、慌ててそんな想いを誤魔化すように近くにいたハンナに声をかけた。


「そういえば、ハンナって花言葉に詳しいのかしら?」
「少しくらいならわかるかと」
「じゃあ、これは?」

 パッと貰ったヒマワリの花を見せると少し不思議そうな顔でこちらを見るハンナ。 

「ヒマワリですか」
「えぇ、劇場の前に花屋があってね」
「あなただけを見つめる、でしょうか」
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