黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
男が黒い小瓶を上着のポケットから取り出し、蓋を開けてナイフに黒い液体を垂らした。
そして、ナイフを私に向けて振りかざす。
スローモーションのようにその光景がゆっくり見えていたのに、まだ私は動けずにいた。

「ッ!!」

火傷のような痛みが走った。
頬に生暖かいものが流れ、馬車の座席や床にはウィル様が綺麗だといつも言ってくれていた私の黒髪が散らばった。

「楽しむ時間がなくて残念だけどよ、それはまた今度だ!」

……動いて!私の身体!

「こっちもそろそろ行かねぇとな。あともうひとつくらい傷を付けてからな!」

男がまたナイフを振りかざした!

動けッ!!

私は震えながらも馬車の中に落ちているお守りのネックレスに手を伸ばして力を込めた!

「なっ!?」

ゴォォッ!と突風が吹き、男が馬車の扉ごと外へと勢いよく飛ばされた!
小さな水晶なのにこんなに強力な能力が込められていた物だったの!?
まだ手が震えている私にはここまでの力は出せなかったはずだ。

壊れた馬車から視線を外に向ける。

「シエナ様が…」

身体の震えを抑えることもできず、一歩ずつ動き馬車を降りると、そこには目を疑うような景色が広がっていた。

倒れている人や怪我をした人達、血で赤く染まっている石畳。
そして、王宮騎士団の人達が襲ってきた男の仲間達が逃げるのを防ごうと戦ってくれている。

倒れているシエナ様の側にペタンと座り、手を握った。

「ミオ様…風の水晶を使えたのですね…」

「……ごめんなさい。私のせいで…こんな」

背中と腕の切り傷から血がどんどん流れてくるわ!

「ブローチの力を使わなかったの?」

「……私が今ここで眠る訳には…。後で…お力を使わせていただくつもりでしたよ」

「シエナ様…」


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