黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
「体調を崩されたとお伺いしましたが、その後はいかがでしょうか?」

「途中の悪天候で海が荒れたのもあり、船旅で参ってしまったようで。もうこの通りです」

両手を広げて笑顔で答えるアイト国、第二王子ダニエル殿下。襟足を少し刈り上げた短めの茶色の髪に、意志の強そうなスッとした切れ長の黒い瞳をより細め、体格の大きな体を少し屈めて恥ずかしそうにしている。

「そうですか。安心しました」

「ハハ、お恥ずかしいです」

アイト国とは陸と海路を合わせると約1ヶ月程かかる距離だ。
荒波での船旅は負担もきつかっただろう。

「このエーデル王国は気候も穏やかで自然も美しく、希少な資源もある。噂通りに素晴らしい国ですね。いつか来てみたいと思っていたのです」

ダニエル殿下は他国を半年程滞在し、その国の文化を熱心に学び、自国に帰るそうだ。
勉強は広範囲に及び、博識だという。
その志を私も見習わなくてはならない。

「ありがとうございます。こちらがこの王国の水晶です」

各国との外交で使用する部屋へと案内をする。
ケースにズラリと並べられた水晶は様々な色や大きさ、そして歴代の聖女様のお力により特殊な輝きを放つ我が王国ならではの宝石だ。

「おおっ!本当に素晴らしい!我が国の水晶とはまた違う輝きがありますね。これが『聖女様のお力』ということですか…」

いずれここにもミオ様の能力が込められた水晶も並ぶことになる。
ミオ様の水晶はどのような色と輝きなのだろうか。
きっと私にとって特別な水晶になることだろう。

「今世の聖女様にはまだお会いできないということで残念です」

「……ええ。聖女様はとても繊細なお方です。もうしばらくお待ちください」

「今からとても緊張しています」

アイト国には聖女様は現れない。
この世界の中でどれ程の国が聖女様の加護を授けられているのだろうか。

「では専門の学者からもこちらで詳しくご案内をいたします」

「はい。ありがとうございます」

煌めく水晶を見ながらダニエルはポツリと呟いた。

「……やっと『伝説の聖女様』にお会いできる」


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