貴方はきっと、性に囚われているだけ
 家に入るなり、玄関のドアに背中を押し付けられ奪うようにキスをされる。抱き締められ、何度も角度を変えてキスをされた。琉斗の匂いや温もりに抑制剤を飲んでいるのにも関わらず、体に熱が溜まっていく。フェロモンが溢れ、気付いた琉斗はフェロモンを放出した。それを嗅いだだけで、とろりと愛液が溢れ下着はぐっしょりと濡れだす。ある一室に引き込まれ、有無を言わさずベッドに押し倒された。怖くなり、起き上がろうと暴れ出す。
「やだ、やあっ」
「一葉」
 宥めるような声色に、一葉は動きを止め恐る恐る琉斗を見上げる。琉斗は微笑みながら、言葉を紡いだ。
「確かに、最初はバース性に囚われていたかもしれない。運命の番だって、本気でそう思った。そう思ってる。でも、今は一葉だから好きなんだ。一葉だから、僕は恋をしたんだ」
 そう言われ、再び唇を重ねられる。舌が入り込み、絡め取られる。次第にどんどん熱くなっていく体が抑えられない。涙が自然を溢れてくる。
「本当? 嘘じゃない?」
「嘘を吐くもんか。それに、ほら。君の泣き顔を見ただけでこれだよ」
 言いながら、一葉の脚に下半身を押し付けてくる。熱いものが当たり、頬が紅潮していった。
(そっか……性に囚われていたのは、私の方だったんだ)
 琉斗の告白を聞くまで、バース性に囚われているからだと勝手に思い込んでいた。でも、琉斗は自分だから好きだと言ってくれた。……バース性に囚われていたのは、寧ろ自分だったんだ。
 両想いだったと知った瞬間、琉斗が欲しい、欲しくてたまらないと体が激しい欲求に駆られた。一葉は手を伸ばし、琉斗の頬を包み込む。「一葉?」と首を傾げる琉斗に、一葉は微笑んだ。
「お願い……抱いて、ぐちゃぐちゃになるまで、抱いて欲しいの……」
「っ」
 熱い吐息交じりに願いを伝えると、琉斗は目を見開いた。直後、貪り付くようなキスをされ、一葉は再び涙を零した。
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