私に毒しか吐かない婚約者が素直になる魔法薬を飲んだんですけど、何も変わりませんよね?そうですよね!?
いつもならここで私も同じく『はぁ?』なんて返していただろう。
しかし彼の本音を知ってしまった私の口から出たのは、

「触れたいって願望、叶えてみますか?」

だった。


“言った!言ったわ!!だ、だって彼の願望を叶えなきゃテオドールはずっと胡散臭いままだし、それに挙動不審すぎてお外に出せないし!”


そして何より、私の方こそ婚約者との不仲でロヴィーシャ家の跡継ぎを作れないかも、と不安に思っていたのだから。


「ほ、んき⋯か?」
「私達は婚約者同士よ。しかも既に一緒に住んでいるの、むしろ何が問題なのかしら?」

このチャンスを逃すものかと一気に言いくるめようとする私に、少し考え込むように一瞬黙ったテオドールは。


「⋯薬のせいでもうバレてしまっているが改めて言う、俺は君が好きだよクリスタ」


鼓膜を直接震わせるようにそっと耳元で囁かれ、私の心臓がきゅうっと震える。

それは顔を見ず魔法薬の効果が発動していないからこそ、何よりも信じがたく何よりもくすぐったい彼の本心だった。


「い、今の⋯⋯っ、んっ」

思わず顔を上げると、それを待っていたかのように唇を塞がれる。
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