私に毒しか吐かない婚約者が素直になる魔法薬を飲んだんですけど、何も変わりませんよね?そうですよね!?
グイと腰を引き寄せられ、ベッドに仰向けで倒れ込むテオドールと重なり合うような格好で私もベッドに連れ込まれた。


“⋯ほ、本当に今から私⋯っ!”

早鐘を打つ鼓動が彼にまで伝わりそうで少し恥ずかしく、しかしずっと悩ませていた跡継ぎ問題が解決しそうな事に安堵する。

いつもあんなにギスギスしていたというのに、顔を合わせれば常に苛立っていたはずなのに。


「もっと⋯」

ねだればすぐにまた彼の唇が私を啄み、角度を変えて何度も重なった。

“⋯気持ちいい”

キスが気持ちいいのか、それとも彼とだから気持ちいいのか。


――あぁ、いつもあんなに苛立っていたのは、アカデミー時代から憧れていた彼に相手にされなくて悲しかったからだったのね。


そしてこれが彼の本音。
私に触れたいと言った彼の、ずっと秘めていた願望ー⋯


⋯本当に?


不安からも解消され、想い人から望まれる。
それは魔法薬が起こした奇跡であり彼の本音なのだとわかっているはずなのに。


「く、クリスタ⋯?」
「え?あ⋯私⋯?」

じわりと視界が滲んだと思ったら、彼の頬にぽたりと水滴が落ちる。

“私、泣いてるのかしら”
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