私に毒しか吐かない婚約者が素直になる魔法薬を飲んだんですけど、何も変わりませんよね?そうですよね!?
そっと自身の目元に触れると、更に一滴二滴と涙が零れた。


「⋯そんなに嫌なら俺の願望なんて叶えなくていいんだ、クリスタ。愛おしい人が悲しむ姿は見たくなんてないんだから」

一瞬揺れた彼の黄目が真っ直ぐ私を射貫くのは、きっと『素直な本音』を私に伝えてくれようとする彼の優しさなのだろう。

それがわかっているのに、私は泣くばかりで上手く言葉が出てこない。


“違う、違うのテオドール、私は貴方に触れられるのが嫌な訳ではなくて⋯っ”


ぽろぽろと涙を零す私の頭をそっと撫でた彼は、上に乗ったままの私の体をそっと起こす。


「君を愛しているというこの気持ちだけあれば、俺はそれで幸せだから」

一瞬目を伏せた彼がすぐさま目を合わせ、そしてやはり眉間に深く皺を刻み低い声色で告げるのは甘い言葉。

彼の本音。
彼の願望。


まるでいつもの彼とは違う、壊れてしまったかのような、別人になってしまったような台詞達。


“あぁ、そうか私ー⋯”

私を残しベッドから降りようと背を向けたテオドール。
そんな彼を引き留めるようにぎゅっと後ろから抱き付くと、想定外だったのか彼の肩がビクッと跳ねた。

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