俺の好きな人【完】


慌てた様子で、俺の腕を掴む神橋さんの姿


白くて細い手が俺の黒くてゴツい腕に絡んでいる



ハッと交わる視線


神橋さんは潤んだ瞳で最も簡単に俺を捉えて


「何してるの!濡れちゃうよ?私傘持ってるから一緒帰らない?」


そんな爆弾発言に思考が停止


見上げてくるその上目遣いと相まって、心臓がうるさい



「………いやいいよっ、悪いし」


やっと出た声はか細く、雨音に消えそうだった



一緒に帰ろうなんて、緊張して可笑しくなる



きっと神橋さんはいい人だから純粋に心配してくれているだけだろうけど、俺の心臓がもたない



「私が心配なの!ダメ…?」


そんな上目遣いに、射抜かれて



「っ、全然、ダメなんかじゃないけど」



こういう時の俺は不甲斐なくて、素直に喜んだ態度を取ったりできない



本音は願ったり叶ったり、なんですけど。



てか、逆にいいの?俺と相合傘なんて。

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