俺の好きな人【完】
あーあ、せっかくの2人きりの時間だったのに、緊張して話せなかった。
「やっぱり濡れちゃうし送ろうか?」
控えめにそう問いかけてくる神橋さん
どこまでお人好しなのか心配になるよ
「大丈夫だよ。そろそろ暗くなり始めるし」
こっちが送ってあげたいくらいだけど、雨はまだまだ止みそうにない
「あ!いいこと思いついた!私が送って、平くんがまた送ってくれたらいいんじゃない!?」
「……」
「って、二度手間か!!大人しく帰ります!」
自分でちょっとおかしなことを言ってることにきづいたのか、急に顔を真っ赤にして照れくさそうに笑う
天使だ
思わず込み上げる笑い
「ふっ、うん。そうして。」
走ればすぐに着く距離だし
「じゃあまた明日ね!」
「うん、明日」
柔らかい神橋さんの声と、笑顔が好きだ
大きく手を振って離れていく彼女を、雨に打たれながら見えなくなるまで見つめていた
これじゃ神橋さんが傘に入れてくれた意味もないくらい、濡れちゃうな
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