逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 シュテルツは椅子に座ると、
「実は、ここへ来たのは、こんなものが届いたからなんだ」
 一通の文書を見せた。

「なんだそれは」

「バッハスとケイネの繋がりを密告した文書だ。しかし出所は不明だ。直ちに王宮に提出できるものではない」
「まあ両者の結託は噂されてはいるがな、その証拠を掴むのが先だろう」

 証拠か、とシュテルツは考えていたが、

「一緒に行ってみないか」
「一緒に行くって、ケイネの屋敷へか」

「いや、直接あそこへ乗り込んでも泥は吐かんだろう。それよりカライルという商人を知っているか」
「この王都でも一・二を争う大商人だな」
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