逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 スープやローストビーフが運ばれてくる。
 給仕が、
「旦那様はすぐ参られます。ご一緒にということですので」

 え? とソフィーが顔を上げた。
 さっき応接間からダイニングへ案内された、それである程度は察していたが、

「初対面の私と食事をということですか。同じテーブルで?」
「そのようにお聞きしております」
「でも、あの方は軍の最高位の司令官様で」

 椅子に座ることもならず立ち尽くしていた。
 と、
「遠慮されることはありませんよ」
 後ろから響く声がした。

 部屋着に着替えたアーロンだった。
 プールポワンをざっくり着こなしている。
 彫の深い顔立ちに壮年の渋さが加わって軍服の印象とは別人だった。
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