逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 つい見入ってしまったソフィーに、
「素敵でしょう、旦那様は。今でさえこれですもの、若い頃は見惚れるばかりで女性にもてたのなんのって」
 侍女長が得意げに言う。

「なにをバカな、少しは口を慎みなさい」
 アーロンがたしなめた。

「彼女は侍女長でリズという。何かあったらこの人に言うといい。一見鋭いが実は優しい面もある、かな?」
「まあ、何をおっしゃっているのですか。私は旦那様が小さい頃からお仕えしてそれは優しくお育てしましたのに」

「育てたって? お前は俺より一つ年上ってだけじゃないか。それをまるで母親のように」
「いいえ。旦那様のお母上が亡くなられるとき、幼い息子を残してさぞ無念だっただろうと。だから私は一生懸命に」

「なんだと? あの時は俺が三歳だったから、お前は四歳だろう。それで一体どうやって」
「いえ、ですからそれは」
 むきになって詰め寄っている。
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