逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「つきましては」
 と副隊長のセルビィが前に出て、
「隊で会議をして、満場一致で隊長のガイが代理に就くことになりました。それで、その了承のための領主印が必要なのです」
 と懐から書類を出した。

 国境警備について軍の規約を記した用紙に捺印する箇所がある。

「じゃあ、屋敷に帰りましょう。領主印はあそこにあるから」
 そういうと小走りに洞窟の外へ出る。

 ガイとセルビィがそれに続き、
「屋敷に帰るんだって?」
 ア―ロンも後を追った。

「それじゃ俺の馬の前に乗るか。歩いて行けば日が暮れるだろう」
 つい口にした。

 あのガイやセルビィの馬に相乗りなどさせられるか、とは胸の中に納めておいた。

 ソフィーは振り返ると、
「いいえ。あ、そうですね、アーロン様の部下の馬を一頭貸していただければ」
 さらりと言った。
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