逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「シュテルツ殿、これだけ待ってもハインツ殿は出席されないのだ」
 老齢の伯爵が糺すように言った。
「これはあの方の答えと取ってもいいのではありませんか。ご母堂(ぼどう)の背景を聞かれて憤慨した、いや、答えられず進退窮まったと言うべきか」

「と、おっしゃいますと?」

「次期国王を辞退するということですよ。そうでなければこれだけ皆を待たせて、この重要な会議をないがしろにする訳がないのだ、違いますか」

 返す言葉がなかった。
 彼の周囲もそろってうなずいている。

 これ以上の引き延ばしは無理だと思った、いったん閉会して後日再び招集するべきなのか。

 しかし後日再開してそのあとはどうなる?
 諸侯らの心情はアーロン擁立から逆の方向に流れていた。

 事態が極めて難しくなったのを感じた。
 全身から力が抜ける思いがした。


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