逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
カウントダウン
 宰相のシュテルツは紅茶を一口飲んだ。苦い味がする。

 先ほど、このグリント―ルの王に謁見して来たのだ。
 彼はまだ若いのに下腹が出て、頭も薄くなっている。

 そのグリンドラ王が思案するように言った。
「・・お前の任期もあと一か月だな」
「はい」

 その話だろうことは分かっていた。
 この国の官僚は五十歳になったら退職するという決まりがある。シュテルツの誕生日がすぐそこに迫っていた。

「お前は長い間この国の宰相として仕えてくれたんだ。盛大な退職式を催そうと思っている」
「・・はあ」

「どのような趣向がいいかの? 希望があれば言ってみるといい」
 王は上機嫌だった。

「陛下、まことにありがたい話ではありますが、その・・」
 この王にどの方向から話をもっていけばいいのか。
「一部の偵察隊が言いますには、隣の国のバッハスの動きに怪しいものがあると。国境付近に簡易の宿舎を造り、兵士を集めていると申しておりますが」

「怪しいものがあるだと? いや、大丈夫だろう、あの国とは不可侵の条約を結んでいる。それをゆめゆめ破ることはないだろうよ」
「・・・・」
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