逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
ラクレス公
 ラクレス隊の中にのっぽの兵がいた。

 見回りのとき、彼は隊の先頭を行くのが好きだった。
 その日も一番乗りで馬を進めていく。

 小道に差し掛かったときだった、前方に倒木が横たわっているのが見えた。
 馬でも跳び越えることが出来ない。
 仕方なしに最後尾から引き返すことにした。

 のっぽの兵はがっくりした。
 こうなると自分がしんがりになるからだ。
 後塵を拝するなどと、と頭の中でぼやきながら手綱を引いた。

 ・・と、皆が行き過ぎたあとに何かが落ちているのを見つけた。
 一枚の紙のようだった。
 気になって拾い上げる。

 兵は黙ってそれを見ていた。
 
 首を傾げて見るうちに、自分が隊から遅れているのに気がついた。
 あわてて追いつこうとする。

 仲間に合流すると、その紙を手持ちの袋に入れた。
 そして何事もなく進んでいった。

 惜しむらくは、その兵は、文字が読めないということだった。
< 68 / 479 >

この作品をシェア

pagetop