逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
意外な訪問者
 岩肌には凹凸がある。
 デイズはそれを手がかりに前へ進もうとしていた。

 歩くたびに脚が痛む。筋力が落ちているのだろう思うように動けない。受けた刀傷がなかなか治らないのだ。
 しかしいつまでも寝ている訳にはいかない。傷口を庇うようにまた歩こうとした。
 
 ・・と、それに肩を貸すものがいた。
「あ、ありがと・・」

 言いかけて息が止まった。
「アッ、アーロン・ハインツ司令官殿!」

 それは国軍の長のアーロンだった。

 ヴェンも目を剥いて、
「ど、どうされたのですか、いったい?」

 主人がこんな山中にいることが信じられない。

「どうしたもこうしたも」
 アーロンが笑った。
「じっとしていられるか、こんな面白い話を聞いて」

 手にはヴェンが託した伝書鳩の文があった。


          * * * * *

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