逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「本当に世話になったのだな」

 アーロンがソフィーを見た。
 見つめられて落ち着かず、そっと笑みを返した。

 アーロンはうなずいてから、
 それで、とデイズに向いた。
「お前がここで厄介になっているのはどういう訳なのだ」

「アーロン様に命じられて国境の調査に行ったのですが」
 覆面の集団に出遭ってという件を告げた。

「賊は十人ほどでした。何しろ急に暗闇から出てきたので」
「覆面の十人? それはいつのことだ」
「国境へ出向いたあの夜です」

 すると、と考えていたが、
「ラクレス公が行方不明になったあの夜だな」
 
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