逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「あの、この間は本当にありがとうございました」
 ソフィーが深々と頭を下げた。

 洞窟のほど広い場に、アーロンたちと車座になっている。

「お屋敷にお邪魔して、そのうえ兵たちの治療費を出していただきました」
「いや、礼を言うのはこっちの方だ。国軍の部下であるデイズの看護もしていてくれたのだからな」
 その目に感謝の念がこもっている。

「ソフィー嬢、これまでのいきさつを話してもらえないか。ありのまま、すべてだ。この洞窟のこと、国境での出来事、そしてあの川のほとりでケイネ伯のギースに連れられていたことを」

 ソフィーはじっと考えていたが、
「はい。まず、ひと月前に国境で紛争がありました。突然バッハスの一部が越境して来て父のラクレス隊と衝突しました」
 アーロンがうなずいた。

「双方に怪我人が出た時点でバッハスは引き上げたそうです。父は負傷者たちをこのラクレス領に帰して治療させようとしました」
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