逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「そうです」

「覆面の集団はどの方向から来てどこへ向かったのだ」
「山側から来て西に走って行きました」

「西というと、ラクレス隊の宿舎がある所だな。それは何時頃だったのだ」
「夜の八時だったと思います。仲間と晩飯を食べようと食堂を探していたので」

 じっと考え始めたアーロンに、
「何かあるのでしょうか」
「いやなんでもない、ご苦労だったな」

 ソフィーに向かうと、
「その後、お父上について何か心当たりはないのか」
「なにも分からないのです。国境のラクレス隊からも使いが来て所在を聞かれたのですが、私にはまったく」

「そうか」
 深い目の色をしてうなずいた。
< 82 / 463 >

この作品をシェア

pagetop