石ころ令嬢は愛を知って光り輝く【1話だけ部門】
この世界には、“ジュエル”と“コレクター”と呼ばれる人間がいる。

ジュエルとは、額に宝石(ジュエル)が埋め込まれた状態で生まれてくる人間のこと。
どんなジュエルをもつかは遺伝にもよるが基本ランダムであり、髪や瞳にもジュエルと同じ色が表れ、流す涙もジュエルに代わる。
そして一部の例外を除いて、ジュエルはほぼ貴族女性である。
自分が生み出すジュエルで着飾って、より地位の高いコレクターに嫁ぐことがステータスとされる。
そのためジュエルの美しさや希少性が価値になる。
そんなジュエルは、コレクターに愛されることでより輝き美しさを増すとされている。

コレクターとは、ジュエルのパートナーとなる人間のこと。
ジュエル同様、ほぼ貴族男性である。
ジュエルを手に入れたいという本能を持ち、ジュエルとしか子を成せない。
ジュエルに心からの愛を注ぐ(磨く)ことでより輝かせることができる。
美しく希少性の高いジュエルを手に入れる―――妻にすることがステータスとされている。
正装の時は、妻であるジュエルの生み出した宝石を身につけることが慣習となっている。

そして、ハントリー男爵家の長女である私もジュエルとして生まれた。
けれど私の生まれ持ったジュエルは、くすんだ歪な形の―――まるで石ころのようだった。

ジュエルとして生まれると、幼少期のうちに鑑定を受ける必要がある。
鑑定が終わるまでは、ジュエルの価値は計り知れないからと両親は僅かな希望を抱いた。
しかし鑑定でも、私のジュエルには名も価値もつくことはなかった。

男爵家である我が家が成り上がるには、価値あるジュエルの娘を設け、地位のあるコレクターに嫁がせる必要がある。
そう考えていた両親の失望は凄まじく、それは愛情の消失へ直結した。

母に抱きしめてもらった記憶も、父にあたたかい言葉をかけてもらった記憶もない。
ただ死なない程度に生かされていただけ。

妹のローザが生まれてからは、私の扱いも変化した。
ローザは、濃いピンク色のルビーのジュエルを持っていた。
ルビーは希少性が高いジュエルだ。
真紅のルビーよりは劣るものの、十分に価値があると鑑定でも証明された。

それからは、全てにおいてローザが優遇される生活となった。
「与えてやっているだけ感謝しろ」と残飯が出されるようになり、私の衣食住が削られた分は、ローザの贅沢に回った。

出来損ないと蔑まれる私と、両親からの愛情を一身に受けるローザ。
私たちは全てが対照的だった。

ローザは常に私のことを見下していた。
幼少期の頃はやってもいないことを両親に言いつけられて、その度に私は罰を受けた。
そして社交界デビューを果たしてからは、「私に虐められている」などとどれだけ私が悪人であるのかを吹聴して回った。
両親と同じように、皆が美しく価値のあるジュエルのローザを信じた。

そして私は“石ころ令嬢”という蔑称と共に、人々から疎まれる存在となったのだった。


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