『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
 
 最初は『なんてことを言うんだ』と反論しようとしていた神尾だったが

だんだん不安になってきて・・『果たしてほんとうに自分の子なのか?』と

思うようになってしまう。


 物理的にも心情的にも何も整ってない中での突然の友里の妊娠に
神尾はとにかく怖気付いていた。

 そして根米からアドバイスされて作成した文章を友里に送った。


『今回は堕ろして。今は時期が悪いと思う。
子供を作るのは俺がそっちに帰ってからにしよう』と書いて。


 神尾を信頼し頼り切っている友里は泣く泣く了承するのだった。



 友里に対して酷いことをしている自覚のある神尾は罪悪感に苛まれながら
仕事を終え自社ビルを後にした。



 そして根米が作って送った文章の内容を撤回する文、すなわち『産めばいい』という文面を

何度も何度も送り直そうと思い、帰宅途上でスマホを手に取るのだがいまひとつ決めかねて

とうとう家についてしまう。



 自宅でもずっと『産めばいい』という文面を送ろうかどうしようか悩み続けるのだが、
その夜になっても神尾は結局送らずじまいになってしまった。



 あれから友里からの連絡も途絶えてしまい・・。




 早く産んでもいいと言ってやらないと友里が今日にも堕胎する為に産婦人科の門を

くぐるのではないか、そう思いあせるばかりのくせに、やっぱり自分には荷が重すぎて

友里に良い返事をしてやれない。




 転勤さえなかったら、おそらく自分は今回の妊娠を機に学生時代から付き合ってきた友里と
結婚し家庭を持ったことだろうと思う。


 翌日の土曜もずっと朝から友里の妊娠のことが頭から離れず
午後になってもストレスマックスの神尾だった。
 


 最近週末は根米菜々緒と会って食事してホテルへ行くというのが
ルーティン化していたなと我に返った頃、まさにその根米から誘いの連絡が届いた。


 酔いたい気分の神尾にはジャストタイミングな誘いとなった。
 

 串カツとちょっとした小鉢にみそ汁の付いた食事と併せて焼酎《日本酒》を飲んだ。

 自分の前に座り食事しながら根米が何やら楽しそうに話しているが
神尾の耳にはほとんど何も入って来なかった。


 今までは自分を慰めたり助けてくれたりした勇者だと思っていた女が、
同じ女性だというのにいとも簡単に友里に堕胎を勧めた。


 同意した自分のことは棚に上げて神尾は根米のことを酔った頭で
酷い女だなぁと思った。



 神尾のストレスは完全に根米に向かっていった。



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