『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
根米の投げてきた台詞にまたもや神尾は反応して背筋が凍るのだった。
『おぞましい』という単語が降ってきた。
俺は今のいままで根米のことは少しお節介な世話焼き人間くらいの認識しかなく、
おぞましい妖怪のような人間だと判別した今では吐き気を催すしかない。
心情通り吐き気を催し気分のすぐれないまま、その日は寄り道などせず、
俺はまっすぐ自宅に帰った。
たまたま点けたテレビ番組では結婚してすぐに妊娠した奥さんの浮気を疑い
離婚すると騒ぎまくり、両親や姉などから妊娠時期の計算の勘違いを指摘され、
怒られまくっている男の映像が映し出されていた。
『あなたがこっちへ来てからすぐに子供ができたって、ちょっと変じゃない?
もしかしたら他の男性《ひと》の子供かも』
そんな風に根米に言われたこともあり俺は友里のことを疑い
彼女に堕胎を勧めたのだ。
俺はもしかしたら我が子を・・自分の子を殺してしまったのかもしれないと
この時初めて自覚し、愕然とした。
根米が、しきりに仕込んだ時期と妊娠の週が合わないと俺に言ってきたんだ。
それで俺もだんだん不安になってしまい・・友里が浮気なんてするような
人間じゃないって分かっていたのに、根米に何度も計算が合わないおかしいと
言われ続けるうちに、根米の言うことがもし当たっていたらと思うようになってしまって。
今さらながら、俺はこの時になって根米に自分がロックオンされていて
嵌められていた可能性に思い至った。
そうなると連絡の取れない友里のことがますます気になりはじめた。
実は俺のせいで彼女の周りには誰も相談できる友人がいない。
俺が皆との付き合いを止めさせたせいだ。
毒親な為、親にも頼れない。
そうだ、友里は今ひとり孤独の中にいて今にも倒れてしまいそうな場所に
佇んでいるに違いない、きっと。
2~3日のうちに休みを取って友里に会いに帰ろう、その夜俺はそう決心した。
そして根米と今の関係を止めなければならないことも。
しかし思いのほか、根米菜々緒と切れるのには大変な労力と時間が掛かってしまい
帰省もままならず月日だけが流れていき、神尾の決心がすぐに実行されることはなかった。
結局神尾は根米と手を切るのに半年も掛かってしまい、最後にはセクハラで
訴えられ会社を首になる。
こんなことなら根米を宥めるのに時間を掛けなきゃよかったと後悔ばかりが募る神尾だった。