『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―

 自分で自分の身体のあちこちに傷をつけ、ブラウスを引きちぎり
外に駆け出して行った。

 そしてそのあとは根米の狂言で大変な目に合うことになった。

 会社にセクハラされたと彼女が俺を訴えたのだ。




 これまでセクハラされてきたと言う根米と、今までのことは

合意でどちらかと言うと根米のほうが積極的だったこと、今回の主張も

言いなりにならない自分に対する当てつけで狂言であること、と主張する神尾。




 言うべきことは毅然とした態度で主張したものの、自分の主張が
ちゃんと通るかどうか、実のところ神尾には自信などなかった。




 どうなるのか冷や冷やしたが、ある女性事務員が根米が神尾との関係を
うれしそうに話していたと証言してくれた為、冤罪(えんざい)が証明された。



 しかし、上司が部下に手を出したということで、神尾は会社にはいられなくなった。

 


 子供を堕胎させたきりになっていた友里のことを想わない日はなく、また

自分の犯した罪の意識も日に日に強くなり、神尾は根米と揉め始めた頃よりも

更に重苦しい日々を過ごすようになっていった。




 それでも少しして落ち着くと会社を辞めることにはなったけれど

根米とも縁が切れ、愛しい友里の元にもう少しで帰れるのだと思うと

久しぶりに心が軽くなっていくような気がするのだった。


            ◇ ◇ ◇ ◇



 神尾は実に7か月振りに郷里の土を踏んだ。


 流行る気持ちを抑え歩いて友里の家まで行くのももどかしく
タクシーで乗り付けた。


 当たり前のようにいつものごとく次の新しい家が見つかるまで
彼女の家に滞在するつもりでいた。



 十二分に反省していたはずなのに考え方が甘いというか、それくらい

過去の自分の所業がどれくらい酷い仕打ちだったかをまだまだ神尾は

自覚できないでいた。



 友里の家の前に着くと、大好きな彼女に会える喜びでいっぱいだった。


 ちゃんと謝って俺たちはやり直すんだ。

 就職先を探して結婚もして、それから今度こそ何の憂いもなく子供だって持てる。 
 
 幸せの予感しかしない神尾だった。





◇後悔、先に立たず


 友里が出て来た。
 懐かしい顔に皇紀の顔が自然とほころぶのだった。


「俺が出した手紙ちゃんと届いてた?」

「うん」

 神尾は友里の着ているマタニティーを見てそれからお腹周りに視線を移した。


「友里、部屋に入れてもらっていい?」
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