『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
 いつもなら自然の流れでスムースに部屋に通されてるはずなのに
今日は自分から断りを言わないと家の中に通されないという違和感に神尾は気付いた。



 そして自分だけが今回の帰省を喜んでいるという事実にも気づいてしまった。


 友里の顔はニコリともしていない。

 どちらにしても、部屋に入ってゆっくり話したい、そう思った。
 



 怒っているという風でもないが、会えたことを喜んでいるという風でもない。

 そして何故か声が掛けづらいのだ。
 


 友里との長い付き合いの中で感じたことのない間というか、
いつもと違う空気がそこには感じられた。



 今からたくさん話し合いをして、理解し合えばきっと元の通じ合える
仲に戻れるとこの時の皇紀は信じていた。


 緑茶が出された。



「友里、その・・子供は堕ろさなかったんだな。あんなこと言ったもののずっと
気になってたから、友里のお腹見て俺ほんとにほっとした。

 ほんと良かった、堕ろしてなくて。

 俺さ、術後どうなったか心配で何度かメールも電話もしたんだぜ。 
 
 ぜんぜん通じなくてさ、何かあった? っていうか、手術はしてなかったんだから
大丈夫だったんだよなぁ。

 あぁ、今何か月になった? 生まれるのは春頃になるのか、楽しみだなぁ。



 手紙にも書いたけどさ、こっちで就職先見つけるから、
子供が生まれてくる前に結婚しよ」





「堕ろしてるわ、私たちの赤ちゃん。

 術後の予後が悪くて病院を出た後ずっと家で寝たり起きたりだったの。

 助けてくれる人も頼める人もいなくてすごく困った。

ほんとに死にそうだった。皇紀に連絡しても返事してくれないし」




「そんなぁ~、ほんとに俺は友里からの連絡を一度も受け取ってないし、
俺の方からも気になってたから何度か連絡入れたけど友里からは一度も返事がなかったよ」



「ただ、皇紀からは返事がないのに女の人からは何度か連絡もらったかな」

「えっ・・」


「皇紀、心あたりある?」

「いや・・」



「最初にもらったのには、『神尾が迷惑してるから連絡よこすんじゃない』って
メールに書いてあった。


 私は皇紀に相応しくないって。


 そっか皇紀には新しい彼女ができて私のこと、邪魔になったのかもしれないって思った。

 中絶してほしいってお願いされたのもそれで辻褄があっちゃったしね」




「新しい彼女なんていないよ」




「あのね、そのメールにはあなたと女性がホテルの部屋で一緒のベッドで
寝てる画像が添付してあったけどもね。

 なら、デリヘルとかお金払って女性呼んでたの?」

< 20 / 33 >

この作品をシェア

pagetop