『苦しめてごめん・・』―消せない過ちを悔いる日々―
「信じてもらえないかもしれないけど、根米と付き合った覚えは俺にはない。

 ただ、大人の関係はあった。

 裏切ってたことはすまない。


 今のいままで知らなかったわけだが、俺に隙があって友里との連絡手段が
絶たれてたというわけだ。面目もないよ。

 友里にすごく迷惑かけてしまったし、嫌な思いをさせた。ほんとにごめん」


皇紀はそう言うと頭を垂れた。




「その根米って人に皇紀も振り回されたんだね。なんかすごい人だよね、その人。

 なりふり構わないっていうか・・いろいろとビックリすることだらけで。

 その人とは別れたの・・かな? だから私に嫌がらせの知らせがあったんでしょうね」


「な、堕胎したのにどうして今妊婦さんなんだ?」


「私、子供を失くしてすごく悲しかった。産みたかった、あなたと私の宝もの。
でもお腹からいなくなっちゃって。

毎日メソメソしてた。

そしたらね、俊哉くんが見かねて子供をあげるよって言ってくれたの」




「幼馴染の小倉俊哉のこと?」


「身体を壊して死にそうだった時に助けてくれたの」



「いいよ、その子を自分の、俺たちの子と思って大切に育てるから
友里結婚して、結婚しよう俺と」



俺は友里に譲歩したけれど目の前の彼女が首を縦に振ることはなかった。




「私たちのお腹の子が居なくなった時に皇紀と私の赤い糸は切れてしまったの」
悲しそうに友里が言う。



「心身ともに一番つらかった時に俊哉に助けられたの。

 あの日、彼に出先で会わなかったらと思うと今でもぞっとするわ。 
 
 生きることが怖かった。


 あなたからは全く連絡がなくて、私からの連絡(SOS)にも一切返事がなくて。

 私はひとり、孤独の沼にいたの。


 毎日が辛くて生きるのがしんどかった。

 私・・もう一度赤ちゃんに会いたくてたまらなかった。
 

 ずっと離さずに私の手を握っててくれる人、頼れる人、見つけた。

 赤ちゃん授けてくれた人。

 その人の手を放さないって決めてるの。だからね、皇紀とは結婚できない」



 友里の今まで見たこともない憐憫を湛えた表情と物言いに、
もう自分はこの場にいてはいけないのだと悟った。



 遅すぎたのだ、何もかもが。

 友里の揺るぎない決意がみてとれた。

 
 彼女は俯きもう俺を見てはいなかった。



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